生理学的に効果的なオーリーのタイミングとは

Last updated: 2023/06/16

オーリーがロケットになってしまったり高さが出ない場合、筋力不足というよりタイミングの問題かもしれません。

考えてみてください、地面に片足をつけた状態でテールをはじいた時の方が板がポップするのであれば、板に乗った状態でも同じことができるはずです。もし板に乗った途端にオーリーが難しくなるのであれば、その背景には隠された科学があるはずです。今回は、オーリーのタイミングを科学的、生理学的な観点から研究します。この概念はトレフリップや360ポップ、ノーズライドなど、他のトリックにも応用できますよ。

よくある間違い

ジャンプとポップの違い

タイミングについて話す前に、まず、ジャンプとポップの違いを理解する必要があります。

一般的に、ジャンプとは両足で地面を踏み切って、空中にとどまることを指します。このコンテンツでは「体の重心を元の位置から上げること」と定義し、板から足が離れない場合もジャンプと呼ぶことにしています。

逆にポップは、「後足の足首を使ってテールを蹴り下ろすこと」を指します。ジャンプが体重を上に持ち上げることであるのに対し、ポップはテールを下に蹴ることなのです。

以前から繰り返し言っていることですが、体重が板を押さえつけている状態では、いくらテールをポップしたところで板は上がってきません。板を上げるためには、板にかかる体重を「抜く」必要があります。そのため、ジャンプしてからポップをする、という順番を間違えないようにしましょう。

現象の分解

正しいタイミングでオーリーしたときに板に起こる現象

この宇宙に存在するすべて物体と同じように、重力はあなたの体を地面に向かって引っ張ります。あなたの体重は足に分散し、その圧力はウィールに伝わります。すると、地面はあなたが地面を押すのと同じエネルギー量でウィールを押し戻します。あなたが地面に立つことができるのはこのためです。

ジャンプするには、まずしゃがむ必要があります。立っている状態からしゃがむことで、体は下向きの加速度を得ることになります。これはちょうど落下する物体に起こる現象と同じです。落下することによって、体がしゃがみきったとき、板には立っているときよりも遥かに大きな圧力がかかります。

この状態で板を動かそうとしても、自分の体重が板を押さえつけているため、板は動きにくいままです。この状態を解消することがポップの前にジャンプする理由です。

体を持ち上げるまでの動き

ジャンプするには、しゃがんで得た下向きの加速度を両足で打ち消す必要があります。両足で十分に下向きの力をかけると、体は地面に押し戻されはじめ、やがて慣性の法則で体は上向きの運動を継続するようになります。ちょうど、ボールを上に向かって投げると、勢いがなくなるまで上に向かって進み続けるようなものです。体が上に向かっている間は、板は体重で抑えられなくなり、テールをポップすることで自由にノーズを持ち上げることができるようになります。

ポップの適切なタイミング

しかし、体が上がり始めても、まだポップすべきタイミングではありません。この時点では下半身が曲がったままなので、筋肉が本来持っている力を100%発揮することができません。

人はしゃがんだ後で体を持ち上げることで体の重心が多少なりとも上に移動するため、体をそれほど高く上げなくても前足(つまり体重)が板に働きかける圧力を取り除くことはできます。一方で、テールをポップする力を最大化させるためには股関節、膝、足首を同時に完全に伸ばす必要があります

では、どうすべきなのでしょうか?練習方法については後述しますが、先にタイミングを間違えるとどうなるかを見てみましょう。

タイミングを間違えた時の板への影響

タイミングを間違えた完璧な例:ロケットオーリー

体が上がらないまま、もしくは体が十分に持ち上がらないうちにテールを弾いてしまとこの問題が発生します。

テールを弾いて、板の持ち上がってくるときを想像してみて下さい。体の重心が上がっていない状態だと前足は低いままです。教科書通りいくと前足で板を摺り上げたいところですが、前足が低いままでは弧を描いて上がってくるノーズの力で前足が押し戻され、ロケットオーリーになってしまうのです。

ポップの生理学

ここで一旦立ち止まって筋肉の動きに着目してみましょう。大腿四頭筋(ふとももの筋肉)を収縮させて膝から下を伸ばすことで、地面を押して体を起こす力を獲得することができます。

つまり、脚が地面を押す力を最大限に発揮するためには、大腿四頭筋をできるだけ収縮させる必要があるのです。ポップしたときに脚がまっすぐ伸びていれば、それができているといえます。

逆に言えば、脚が伸びきっていなければ、地面を十分に押し下げることができておらず、滞空時間を確保できていないということになります。

テールを引きすぎるデメリット:効果的に体を持ち上げることができない

ポップするとき、後ろ足は伸ばし切った方がいいことに違いはありません。一方で、テールを引きながらポップする事でもまっすぐ伸ばせてしまう点に注意してください。確かに、ノーズが前足に食い込むようにポップに少し引っ張りを加えた方がいい場合もあります。しかし、テールを引きすぎると、地面からの反発を十分に受けることができず、体を高く上げることができなくなります

テールを引きすぎるデメリット:板が足に食い込みすぎる

また、テールを引きすぎると、板のノーズが地面に対して垂直に跳ね上がるのでははく、前足を過度に押してしまいます。これもロケットオーリーの原因になり得ます。

ロケットオーリーを防ぐには

ロケットオーリーになってしまう場合、テールを引きながらポップするのではなく、両足で地面を垂直に押して持ち上げる事に集中しましょう。地面からの反発力で体・前足・板が垂直に持ち上がるため、板が前足を過度に圧迫する問題を回避することができます。

それでもテールを引きながらポップした方がいいと思う場合

引きポップが間違っているとは思いません。ただ、一つだけ考えてみてほしいのです。重心が板の中央付近にあり、後ろ足がテールにおかれているのであれば、真下にポップしようとしても結果的にテール側にポップしていることになりませんか?最終的にはテールを引く強さを調整する必要がありますが、このように違った視点から見ていただければと思います。

参考まで、オーリーをボーンしたい方のために、物理エンジンを使って「前足の最適な角度を検証してみる」というコンテンツを作りました。こちらもぜひご覧ください。

生理学に基づいたオーリーのやり方 Step1

しゃがむ

高くオーリーしたいときには特に肩と板を平行にするようにしましょう。筋肉が発揮することができる力を100%引き出すには、「伸張-短縮サイクル(SSC)」という概念を利用してみましょう。この理論に基づくと、筋肉は「伸ばした直後に短縮する」と、より大きなエネルギーを生み出すことができます。

しゃがむ低さに応じてジャンプが高くなる

SSCに基づくと、筋肉は先行動作を与えたほうがより大きな力を発揮することができます。その証拠に、立っている状態からしゃがんでジャンプするよりも、しゃがんだ直後にジャンプするほうがより高さを確保することができます。これは、しゃがむという先行動作でジャンプに使う筋肉を引き延ばすことができるからです。

実際に、研究によると、しゃがむ低さとジャンプの高さには統計的な相関関係があることが判明しています。この考え方をオーリーで使ってみましょう。

生理学に基づいたオーリーのやり方 Step2

肩の角度

一般的に、オーリーするときには肩の角度を板と平行にする事が推奨されていますが、僕の場合はある程度開いた状態にすることが多いです。一方で、肩と板が平行になることで、肩が開いているときよりも低くしゃがむことができ、より高いジャンプにつながるという効果もあります。

生理学に基づいたオーリーのやり方 Step3

体重分配

両足の間に体重を置くことで、両足で板を均等に押すことができ、しゃがんだ時に体にかかる下向きの加速度を打ち消しやすくなります。ただし、そのときにやりたいトリックの種類や乗ろうとしているオブスタクルの角度によって体重の位置を調整する必要があります。

普通のオーリーをするときは、前足側に体重をかける人も多いかもしれません。しかし、より高い位置でオーリーをしたい場合は、体重の大部分を両足の真ん中に置くことをお勧めします。

SSCを最大限活用するためには

SSCの効果を十分に発揮させるためには、先行動作を止めずに次の動作に移行するようにしましょう。しゃがんだ後で次の動作につなげるまでの間隔が長くなりすぎるとバランスが崩れる原因となります。初心者の方は、バランスを調整する目的や、ためらってしまうなどの原因で、次の動作までの間隔が長くなってしまいがちです。しゃがみたい場所までまっすぐしゃがみ、時間をかけずに飛び上がる練習をしましょう。

人の脚は膝が完全に伸びるタイミングで一番力を発揮できる

板を押し下げることで、地面が体を上に押し戻し、重心が持ち上がります。すると左足にかかる圧力は減少し始めるため、テールをはじけばノーズが持ち上がるようになるでしょう。しかし、下半身がまだ曲がっているので、このタイミングで弾くのはNGです。

大腿四頭筋の働きに話を戻します。下半身が最大の力を発揮できるようにするためには、膝がまっすぐになるように完全に延ばす必要があります。逆に、膝が曲がった状態のままテールをはじいたとしても、下半身が十分に体全体を持ち上げる前であるため、結局滞空時間が短くなってしまうなどの問題の原因になります。下半身が完全に伸びるまで待ち、そのあとでポップするようにしましょう。

生理学に基づいたオーリーのやり方 Step4

ポップのタイミング

後ろ脚のふくらはぎを使い、足首でテールをスナップします。この時、後ろの股関節、膝、足首は完全に伸びている必要があります。滞空時間が短いと思った場合でも、「ポップでは体が持ち上がらないこと」を忘れないでください。オーリーの高さが足りない場合は、下半身を先に伸ばし、その後にポップをすることを意識してください。

前足を摺り上げる

ポップの後は、前足を摺り上げて、ノーズを前に押し出すアクションに移ります。詳しくは、前回の内容をご参照ください。

地面に両足をつけて練習する

タイミングを合わせるのが難しい場合は、地面に両足をつけた状態で練習してみましょう。しゃがんで、体を持ち上げつつも最後まで右足を地面につけた状態にしておく動作に慣れましょう。できるようになったら、右足で地面を蹴って、体を空中に打ち出します。この練習と実際のオーリーの原理は同じで、地面から離れるタイミングでは後ろ足が完全に伸びきっているはずです。

最後に

AIコンバーターで勢をチェックしましょう

膝を伸ばすことの大切さを伝えることができたと思います。問題は、滑っている間や自分自身を撮影した動画を見ても膝が曲がっているかどうかが分からないため、自分のオーリーの何が問題なのかわかりづらいということです。そこで、AIモーションキャプチャーシステムの出番です。

動画をアップロードすると、システムが自動的に3Dアニメーションに変換してくれるので、自分の動きを客観的に分析することができます。3Dなので、角度を変えることもできます。スローにしてグリッドラインを表示させれば、膝の曲がり具合がわかります。ぜひ活用してみて下さい。

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