オーリーを浮かせる方法を物理学的に解説

Last updated: 2024/08/30

前足をいくら摺り上げてもオーリーが浮かないと感じているなら、少し考え方を変えてみてください。前足が板を摺り上げられるのは、板が前足を押し付けるからであって、前足を板に押し付けるからではありません。

テールをポップすると板は弧を描いて持ち上がってきます。この弧の軌道は前脚の位置と重なるため、板が前足を押し付けている間に前足を引き上げることで、意図的に前脚をノーズに押し付けることなく板を持ち上げることができます。

逆に、前足をスライドしようとして板に押し付けると、板が持ち上がろうとする力を押し殺してしまうため、板は浮き上がることなく落下してしまいます。今回は、オーリーで板が持ち上がる仕組みを科学的に分析します。

サマリー

板が前足を押すのであって、その逆ではない

オーリーを成功させる鍵は、板が弧を描いて持ち上がりながら前足を押しつけることで前足が板を摺り上げることになる、ということを理解することです。意図的に前足を板に押し付けるのではありません。そうしてしまうと、板が持ち上がろうとする力を打ち消してしまうためです。

オーリーで高さを出すための秘訣:前足の軌道の重要性

オーリーの高さは、前足をどれだけ高く引き上げられるかに大きく影響されます。持ち上げたすぐ後に押し下げることで、板の重心とノーズの間に速度差が発生してテールが持ち上がります。

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オーリーのよくある間違い

「摺り上げ練習」の落とし穴

板を浮かせるために一番重要なのは、テールを抑えた状態で前足を板に押し付ける動作と、実際のオーリーでの前足の使い方には大きな違いがあることを理解することです。誤解を恐れずに言うと「足首の外側で板をこする感覚」に慣れることができる以外は、これら二つはほぼすべてが異なっています。

実際のオーリーでの物理現象

これら二つの動作で、板に発生する物理現象を比較してみましょう。実際のオーリーでは板の角度が60度程度まで大きくなりながら、前足を押し付け続けます。

「摺り上げ練習」での物理現象

一方、テールを抑えた練習では、板の角度は30度程度にとどまります。板には前足を押しつける力は働かないため、前足をスライドさせるためには意図的に足を板に押し付ける必要があります。このため、この練習では足首を寝かせて板にこすりつける感覚に慣れることはできるかもしれませんが、実際のオーリーで発生する物理現象を再現することはできないのです。

このことに気づかないまま実際のオーリーでも意図的に足首を寝かせようとすると、板が浮かない問題の原因になることがあります。どういうことか、オーリーの物理現象を時系列順に考えてみましょう。

ステップ1 ジャンプ

ポップしても体重は持ち上がらない

他の動画でも解説していますが、まずは体重を持ち上げます。よくある誤解ですが、テールをポップする事では体重を持ち上げることはできません。板に乗っている状態では体重が板を押さえつけるため、いくらテールをポップしてもノーズが持ち上がってくることはありません。この状態でテールをポップしようとすることは、体重と同じ重さの錘が乗っている板のテールをポップしてノーズを持ち上げようとすることと同じです。

ポップする前に板にかかる圧力を下げる

つまり、ポップする前にジャンプして、体重が板に及ぼす圧力を取り除く必要があると言うことになります。この感覚に慣れるためにはオーリーの練習の途中でHippy Jumpにトライしてみましょう。それほど高く飛び上がる必要はありません。板にかかる圧力を下げることに集中し、しゃがんで、体を伸ばし、体を空中に持ち上げられるようにしましょう。

ステップ2 ポップ

板が浮き上がる仕組み

次にポップの動作について考えてみます。テールをポップすると、ノーズはテールを中心に弧を描いて持ち上がります。この板の動作と前足を持ち上げる力が合わさることで板が持ち上がります。

つま先でポップし、テールを押しつぶさないようにする

後ろ足はテールの中央に爪先が来るように置いて、足首の力を使ってテールをポップし、板を踏み潰す動作は避けましょう

テールを押しつぶしてしまうとどうなるか

この映像では、かかとでポップする事で、テールを踏みつけた状態を再現しようとしています。板は確かに持ち上がりますが、体の重心が低い状態になることで、それ以上前足を引き上げることができなくなります。当然、空中にそれほど長くとどまることもできなくなります。確実につま先でポップするようにしましょう。

ステップ3 前足を摺り上げる

板が前足を押し付けるのであって、その逆ではない

ノーズが持ち上がってきたら前足で板をスライドします。先ほど触れたように、前足は意図的に板に押し付けるように動かすわけではありません。でないと、板の力を相殺してしまうことになります。ただしくは、板が前足を押し返すのです。

前足を押し付ける動作は常に悪いわけではない

誤解のないように言っておきます。前足を進行方向に押しだすことは必ずしも間違っているわけではありません。低いオーリーをするときにはある程度前足を進行方向に押しだす必要があります。板が持ち上がる力が弱いため、前足を垂直に引き上げ過ぎてしまうとと板から前足が離れてしまうためです。

前足の足首を寝かせる仕組み

前足を板に押し付けないことの重要性は、より高いオーリーをしようとしたときに顕著に現れます。足首がリラックスした状態であれば、テールを押さえた練習とは異なり、足首は自然と寝かせられた状態になります。前足が寝た状態になると板と前足の間に安定した摩擦が生じます。この状態で前足を持ち上げることで、板を持ち上げることが可能になります。

前足はなるべく高く引き上げる

次のステップでは、オーリーの後半の動作を解説します。その前に、オーリーの高さは前足の高さに大きく影響されることに注意してください。前足はなるべく高く引き上げるようにしましょう。

ステップ4 ノーズを押さえる

靴底の方向に前足を押しだす

そしてこれがその最後のステップです。前足で板を引き上げた後で、ノーズを抑え込みます。重心から見て前足の裏の方向に前足を押しだすようなイメージです。一人称視点だと単純に前に押しだしているようにしか見えませんが、実際には少し異なります。

前足は引き上げた後で押しだす

ここで重要なのが前足の軌道です。ポップ直後のノーズの位置と、前足を突き出したときのノーズの位置を結ぶルートは無限に存在します。より効果的にテールを持ち上げるためには、山なりの軌道のイメージで、ノーズを十分高く持ち上げ、前足を下ろしながらノーズを抑え込むようにしましょう。

前足はなぜ引き上げる必要があるか

一見すると、ポップしたときのノーズの位置と前足を突き出したときのノーズの位置を結ぶルートが最短になるように斜め上方向に前足を押しだした方がいいように思われます。しかし、次の理由から、この方向ではテールを効果的に持ち上げることができないのです。この世界のどんな物体も、持ち上がった後は重力に従って必ず落下します。同様の現象は当然スケートボードにも当てはまり、前足を摺り上げている間も板が持ち上がる力は次第に弱まっていき、やがて落下します。前足を斜め上に押しだすことでノーズをある程度引き上げることができるかもしれませんが、引き上げが完了したころには板や体が落下を開始することになります。つまり、前足を引き上げ続けてもテールを持ち上げるための力は発生しないということになります。

前足は水平に押しだそうとしても斜め上方向に進む

前足をまっすぐ前に押しだそうとした際も同様です。前のステップで解説したように、板にかかる圧力を減らすために前足には上向きの力がかかっています。この力と水平方向の力が合成され、先ほどと同じように斜め上方向の力が発生してしまいます。

板の重心とノーズの間の速度差

ではどうすればいいのでしょうか。テールを持ち上げるためには、ノーズを引き上げ続けるのではなく、板の重心が持ち上がる力を持っている間にノーズを押し下げ、板の重心とノーズの間に速度差を発生させることが効果的です。

速度差がないとテールが持ち上がらない

逆に、前足を引き上げ続けたり押し下げるタイミングが遅れると、板が下降し始めてからノーズを押し下げることになります。板が下降しているときにノーズを下げても、重心とノーズの間に速度差を発生させることができないため、テールを上げることができなくなります。

山なりの軌道を目指す

板に上向きの力が働いている間にノーズを下げる動作を開始するべく、前足は素早く持ち上げ、頂点に達したら間髪入れずに押し下げるようにしましょう。前足が描く軌道が鋭い山なりになれば望ましい軌道になっているといえるでしょう。

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