まとめ
オーリーの基本は体重を持ち上げること
テールを弾く前に、両足を使って体重を持ち上げることが重要です。重心を上方向に移動させることで、地面からの反発力が生まれ、体を浮かせやすくなります。テールを弾くだけでは不十分で、まずはジャンプの動作を始め、自分自身を持ち上げる意識が大切です。
前足の押し下げはタイミングがすべて
前足で押し下げるタイミングは、オーリーの高さやコントロールに大きく影響します。デッキがまだ上昇中のうちに押し下げることで、テールを効果的に持ち上げることができます。押す方向よりも、どのタイミングで押すかがより重要です。
後ろ足の引き上げと傾けが着地の安定を生む
後ろ足を高く引き上げ、脚を内側に傾けることで、テールがより強く持ち上がります。着地の局面では、この動作によってデッキが重心の下に戻りやすくなります。安定した着地には、足の動きだけでなく、体軸をまっすぐ保つことも重要です。
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ステップ1 体重を持ち上げる
弾く前に、両足を使って体重を持ち上げることを意識しましょう。地面の上に立っているときは、後ろ足だけでジャンプすることができます。これは、地面を押すと同じ力で地面から押し返され、その反作用が後ろ足と体に伝わるからです。
私たち人間はこの感覚に慣れすぎているため、オーリーの仕組みを誤解しがちです。もし後ろ足だけでテールを押し込めたとしても、その直後にはテールの下には何もありません。つまり、どれだけ強く弾いても、体重を押し返してくれる力は働きません。言い換えると、弾くだけでは体を地面から持ち上げることはできないのです。
テールが地面に到達するまで、体は下降し続けます。さらに悪いことに、前足を引き上げようとする力がこの下降の勢いを増幅させ、テールが地面に着く頃には、体全体に下向きの運動が加わってしまいます。こうした力に対して、テールが地面に当たる一瞬の力だけで跳ね返そうとするのは、片足で立ったまま一瞬でジャンプしようとするようなものです。
では、どうすればよいのでしょうか?片足でジャンプする動きをよく観察すると、体が持ち上がる前に、一定の時間をかけて足で地面を押し続けていることに気づくはずです。これは、体にかかっている下向きの力を打ち消し、持ち上げるのに十分な上向きの力を生み出すのに時間がかかるためです。つまり、体は一瞬の弾きで持ち上がっているのではなく、時間をかけて地面を押しているのです。
オーリーでも同じことが言えます。体重を持ち上げるには、ある程度の時間が必要です。そのためには、両足でデッキを押し込む必要があります。後ろ足がテールを押し始めると、ノーズが持ち上がろうとしますが、前足が同じ力で押さえつけることで、デッキは水平を保ったまま押し込まれます。
その結果、両足からの力がウィールを通じて地面に伝わり、その反作用によって体が持ち上がるのです。ポップは体が持ち上がり始めた後に行われるということを忘れないでください。
ステップ2 テールを弾く
ポップのやり方として「足首のスナップを使う」とよく言われますが、これは足首の動きだけに集中すればよいという意味ではありません。人間がジャンプするときのバイオメカニクスを考えると、最後に地面に触れるのは通常つま先です。つまり、体重を持ち上げる動作の中で、足首は自然とスナップのような動きをするのです。
人間の自然な身体の反応に加えて、後ろ足が完全に伸びきる瞬間に足首を意識的に使うことで、ポップを最大化することができます。
後ろ足の位置については、あまり厳密に考える必要はありません。一般的には、足の母指球をテールの端の中央付近に置くと、高さのあるオーリーがしやすくなります。ただし、人によって足の形や靴のサイズは異なるため、見た目には足が完全に中央にあるようには見えないこともあります。最も大切なのは、自分にとって安定感があり、快適にポップできる足の位置を見つけることです。
ステップ3 デッキの位置
テールを弾いた後、デッキは垂直に持ち上がるのではなく、テールを軸にして体のほうに向かって持ち上がります。デッキの勢いとは逆方向にノーズを押すことで、テールを最も効率よく持ち上げることができます。
これはまるで「ボトルフリップ」のようなものです。ボトルを投げるときに、キャップ側を下に弾くように手を離すと、うまく回転します。しかし、横に引こうとすると回転しません。つまり、テールを持ち上げるためには、ノーズが十分な力を持っている状態で、その動きに逆らうように力を加える必要があるのです。
ノーズの持ち上がる力を最大限に引き出すには、ポップの前に重心を少しノーズ側に移動させるのが効果的です。このようにしてポップすることで、後ろ足の力が自然とテールの方向へ向かい、テールを真下に弾くよりも、より強くデッキが持ち上がります。
ステップ4 押し出す方向
ノーズが持ち上がったら、前足で押し出しましょう。自分の視点から見て、前足の位置に対してまっすぐ下に押すイメージで行ってください。オーリーで「ボーン」させるには前足を前方に押し出す必要があるという考え方が一般的で、まっすぐ下に押すことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、頭の位置と前足の位置を比較すると、前足は斜め前方にあることがわかります。つまり、自分の視点からまっすぐ下に押しても、その力にはすでに下向きと前向きの成分が含まれているため、無理に前に押し出す必要はないのです。さらに、これまでに説明したとおり、この方向に前足を押すことでテールを効率よく持ち上げることができます。
仮に前足を完全に水平に押し出せたとしましょう。足自体は水平に動いていたとしても、重心が持ち上がることで、体全体と脚は引き続き上昇していきます。その結果、前足は斜め上方向に動くことになり、テールを引き上げることができなくなります。これは、ボトルのキャップを横に引くだけではうまく回転しないのと同じです。
ステップ5 前足で押すタイミング
また、前足で押し下げるタイミングは非常に重要な要素です。同じ方向に押したとしても、そのタイミングによって結果は大きく異なるからです。テールを効果的に引き上げるには、デッキにまだ持ち上がる勢いが残っているうちに、摺り上げ直後のタイミングでノーズを押し下げる必要があります。
もしデッキがすでに下降し始めているときにノーズを押したとしたらどうなるでしょうか。下降スピードと同じ速度でノーズを押した場合、デッキには力が加わらず、テールも持ち上がりません。もし落下速度より速く押した場合、確かにテールは浮きますが、スケートボード全体の下降スピードも速くなってしまいます。ノーズから着地してしまうオーリーでは、板がすでに下降している状態で前足を強く押しすぎていることが原因なのです。
言い換えれば、オーリーをボーンする上で最も重要なのは、前足をどれだけ強く前に押すかではなく、前足を持ち上げる動作から押し下げる動作へ、どれだけ素早く切り替えられるかという点です。
テールが持ち上がるのは、デッキの上向きの動きと前足による下向きの押しの差によって生まれる力によるものです。この効果を最大化するには、前足をスライドさせてデッキをより高く持ち上げ、上向きの勢いを強める必要があります。そして、オーリーの頂点に達する前から、押し下げる準備をしておくことが大切です。ただし、前足の動きばかりに気を取られないようにしましょう。繰り返しになりますが、最初のステップは体重を持ち上げることです。
ステップ6 後ろ足の引き上げと角度
前足の動作が完了したら、後ろ足を引き上げましょう。足を股の近くまで引き寄せるイメージで動かすと、脚全体が内側に傾きやすくなり、テールをより効果的に高く持ち上げる事ができます。
ただし、ガニ股の人は、後ろ足を引き上げてもつま先が下がりやすく、それがテールの持ち上がる力を妨げてしまうことがあります。これを防ぐためには、足を引き上げる際に後ろ足全体を内側に倒すようにするのがおすすめです。こうすることで、つま先ではなく足の側面がデッキに当たり、より効率的にテールを高く持ち上げることができます。
ステップ7 着地
後ろ足を高く引き上げると、その動きによって足が前方にも移動し、オーリーでボーンアウトした際に特に重要となる、デッキを重心の真下に戻す動きに大きく関わります。
体が下降し始めると、後ろ足はスタンスを広げるようにテールの方へ戻るように動きます。これは体重を支えるための動きであり、この動作によってデッキは再び重心の真下へと戻されます。
注意すべき点として、体の軸が傾いていたり、デッキを前に押し出しすぎたりすると、デッキを体の下に戻すことができなくなります。
Tips
このトリックについては以下の記事でも解説しています。
物越えオーリーの科学:スピード・視線・重心・前足の使い方を徹底解析

止まった状態でオーリーはできるし、動いているときもそれなりにできる。しかし、何かを飛び越えようとした途端に何かがおかしくなり、急にできなくなる。 これはなぜなのでしょうか? 科学的に分解して考えてみましょう。
この動画では、障害物を越えるオーリーの重要なポイントである「スピード」「視線」「重心」「前足の使い方」について解説します。
オーリーを浮かせる方法を物理学的に解説

前足をいくら摺り上げてもオーリーが浮かないと感じているなら、少し考え方を変えてみてください。前足が板を摺り上げられるのは、板が前足を押し付けるからであって、前足を板に押し付けるからではありません。
テールをポップすると板は弧を描いて持ち上がってきます。この弧の軌道は前脚の位置と重なるため、板が前足を押し付けている間に前足を引き上げることで、意図的に前脚をノーズに押し付けることなく板を持ち上げることができます。
逆に、前足をスライドしようとして板に押し付けると、板が持ち上がろうとする力を押し殺してしまうため、板は浮き上がることなく落下してしまいます。今回は、オーリーで板が持ち上がる仕組みを科学的に分析します。
生理学的に効果的なオーリーのタイミングとは

オーリーがロケットになってしまったり高さが出ない場合、筋力不足というよりタイミングの問題かもしれません。
考えてみてください、地面に片足をつけた状態でテールをはじいた時の方が板がポップするのであれば、板に乗った状態でも同じことができるはずです。もし板に乗った途端にオーリーが難しくなるのであれば、その背景には隠された科学があるはずです。今回は、オーリーのタイミングを科学的、生理学的な観点から研究します。この概念はトレフリップや360ポップ、ノーズライドなど、他のトリックにも応用できますよ。