
トリックの問題とその解消法を瞬間的に発見。

動作の分析に必要な全てが詰まったシステム。

日々の進歩の記録に加え、他のメンバーに質問。
トラックが低いと、より少ない力でポップしやすくなるのは本当か?
複数の要素が絡み合っているため、ここでは2つに分けて考えます。
- テールが下がり始めるために必要な力
- テールが実際に地面に到達するために必要な力
まずは前者から見ていきましょう。ポップの瞬間、スケートボードは後輪のアクスル(シャフト内部のウィールを保持する部分の事)を支点として回転を始めます。
ここには重要な物理法則が存在するのですが、スケートボードの形状はやや複雑なので、より単純な例として「ドア」を考えてみましょう。ドアは押すと蝶番を軸に回転します。これは、スケートボードがアクスルを中心に回転する動きと本質的に同じです。形状の細かな違いはあっても、基本原理は共通しています。
ここで、L字型のドアを想像してください。形が平らなドアと違っていても、開き始めるために必要な力は変わりません。縦の部分がどれだけ長くなっても同じです。縦の部分の長さに関わらず、ドアは同じ力で開き始めます。
※ 重さと重心の位置が一定であると仮定した場合。
ただし、蝶番に近い位置を押すと話は変わります。ポイントは、ドアを開けるのに必要な力を決める主因は「ドアの長さ」ではなく、「どこを押すか」だということです。
スケートボードも仕組みはよく似ています。トラックを高くするのは、L字ドアでいう「縦の部分」を長くするのと同じ。ポップする位置が同じなら、板が傾き始めるために必要な力は変わりません。つまり、トラックの高さは「テールが軽く傾き始めるかどうか」には影響しないということです。必要な力が変わるのは、ポップする位置を変えたときだけです。
実際には、トラックの高さを変えると重量も多少変わります。ただ、一般的なHiとLowの重量差はせいぜい数十グラム程度なので、今回はいったん無視します。

次に、「テールが地面に到達するまで」に必要な力を考えてみましょう。HiとLowでトラックの高さが5mm違うと仮定し、アクスルからテールまでの距離はLowで20cm、ポップを完了する時間はどちらも0.1秒とします。これで計算すると、低いトラックの方が、約9%少ない力でテールが地面に到達することが分かります。9%です。無意味だと言いたいわけではありません。ただ、個人的には「軽くなった」と体感できるほどの差ではありませんでした。
トラックが高いと、より高くポップできるのは本当?
まず大前提として、より強いポップに最も重要なのは「テールがどれだけ強く地面に当たるか」です。そのためには、テールが地面に接触する前に十分な加速をしていることが欠かせません。
ここで、ポップの際にテールへ一定の力をかけ続け、地面に到達するまでその力が維持されると仮定してみましょう。トラックが高くなるとテールと地面との距離が広がります。つまり、地面に当たるまでに、より長い時間加速できるということです。
実際のポップは一瞬で弾くような動作であり、最初の瞬間以降も同じ力がかかり続けるわけではなく、急激に減少していくはずです。ただ、このテーマはすでに十分複雑なので、理解をシンプルにするために「最後まで一定の力が加わる」と仮定して話を進めます。
同じデッキを使用した場合、トラックが高い方がおよそ10%エネルギーが大きくなるという結果になります。つまり、テールはより強く地面にヒットし、その結果としてオーリーが高くなる可能性がある、ということです。
なぜ「可能性」と表現するのか。それは、この計算が「テールに一定の力をかけ続けた場合」にのみ成立するからです。
さらに忘れてはいけないのが、ボードの角度です。トラックが高くなると、ボードの角度は約2〜3度ほど大きくなります。その結果、ノーズが前足により強く食い込むようになり、感覚的にも挙動が変わってきます。

ターンへの影響
次に、ターンへの影響を見ていきましょう。トラックが高いほど、デッキをより深く傾けることが可能になります。

より深く傾けられるということは、ターンの弧が小さくなり、より素早いターンが可能になることを意味します。さらに、トラックが高いほどウィールバイトのリスクを大きく軽減できます。
まとめと注意点
ターンに関しては、高いトラックの方が明らかにフィーリングは良くなります。そしてポップについて言えば、低いトラックは約9%軽い力でポップでき、高いトラックは約10%高く反発します。しかし最も重要なのは、たとえ板がより高く跳ね上がったとしても、それがそのままオーリーの高さを決めるわけではないという点です。例えば、前足がある一定の高さより上に動かなければ、どれだけ上向きの力が加わっていても、板はそれ以上には上がりません。板をより高く持ち上げることを可能にするのは、ノーズが前足を押し返すことで生まれる摩擦であり、それは低いトラックでも十分に生み出すことができます。
ポップショービットのように、前足が瞬時に板から離れるトリックでは、高いトラックによる強いポップが有利に働く可能性があります。しかし一方で、高いトラックは地面にテールを当てるまでにより深く踏み込む必要があり、より精密なコントロールも求められます。低いトラックは比較的浅い踏み込みで地面にヒットできるため、ポップショービットのようなトリックはむしろやりやすく感じる場合もあるでしょう。


