クルックドグラインドの錯覚 - 確実に板をかけるためのコツ

Last updated: 2025/12/14

ノーズスライドと比べると、違いはたった5cm程度。むしろノーズスライドの方が簡単にロックできると感じている人も多いはずです。ところが、クロックドグラインドになると、急にできなくなってしまう。斜めのノーズスライドになってしまったり、一瞬ロックしたように見えても、すぐにウィールが外れてしまったりします。実は、これらの問題はすべて、たった一つの原因から生まれています。それは、体が理想的なポジションから大きくズレているということです。なぜこの問題が起きるのかには、ちゃんとした理屈があり、避けるための方法も存在します。本当は、フェイキーで抜けてしまう理由や、レッジから弾かれてしまう理由、プリモで着地してしまう理由など、話すべきことは山ほどありますが、この記事では最も難しい部分である「ロックインの動き」だけに焦点を当てます。ここを理解できると、驚くほどトリックがシンプルに感じられるようになります。

Summary

多くの失敗は、体重がレッジから外れていることが原因

原因は主に3つあります。ノーズがレッジに当たりそうだという錯覚によって早くポップしてしまうこと、体重が後ろに残ったままレッジから板を押し出してしまうこと、そして体重をしっかり持ち上げられていないことです。

もっとレッジに近い位置でポップしても、ノーズは当たらない

テールを弾くと、ノーズは弧を描きながら、進行方向とは逆向きに動くという動きをします。この動きを考慮しないと、体重がレッジから離れたままになってしまいます。

前提条件:正しい姿勢が成立する条件

まずは、正しくロックインできているときの体と板の位置関係を確認しましょう。多くの場合、レッジに対してほぼ平行にアプローチしますが、実際にはある程度「横方向」に跳ぶ必要があります。そのため、ロックインの瞬間には、前足がレッジの角と一直線に揃い、体はレッジの内側に残ります。ただし、グラインドが長く続くにつれて、前足を支点にしながら、体は徐々にエッジの上へと倒れ込んでいきます。この形でロックインできていれば、たとえ重力によって体が引っ張られたとしても、ヒール側のウィールが自然にレッジに噛み込み、体重を支えることで、簡単には抜け落ちなくなります

横から見ると、前足は重心よりもわずかに前にあり、レッジとの摩擦に逆らうようにして、板を前方へ押し出しています。

問題の本質的な原因

トラブルは、体重がレッジから外れた瞬間に起こり始めます。たとえば、斜めのノーズスライドになってしまう場合、前足を伸ばさなければならない位置関係になっていることが原因です。その結果、ノーズのほんの一部分しかレッジに乗らなくなってしまいます。

たとえ一瞬フロントトラックが乗ったとしても、同じ理由でウィールはすぐに外れてしまいます。

誤解しないでほしいのは、体重が常に完全にレッジの上に乗っている必要はない、ということです。体重を支えるには、前足を重心の真下に置かなければならないと思っている人も多いでしょう。しかし、体に運動量がある状態では、進行方向に対して前方に前足を置いても、体重を支えることができます。このとき前足は支点となり、体重は持ち上がろうとします。そのエネルギーが尽きるまでの間、片足でも立ち続けることができるのです。

しかし、前足を出しすぎると、体の軸が傾き始めます。こうなってしまうと、レッジに触れた瞬間に抜け落ちる以外の選択肢はありません。さらに、前足を出しすぎることで、板を追い越してしまう危険もあります。だからこそ、最初の段階では、体重をできるだけレッジに近づける方法を見つけることが重要です。

では、そもそもなぜ体はレッジから離れてしまうのでしょうか。考えられる要因は3つあります。早くポップしたくなる視覚的な錯覚、体とレッジの距離を広げてしまう誤った体重配分、そして重心の高さです。まずは、それぞれの要因が何を引き起こしているのかを見ていきましょう。その上で、どう対処すべきかを解説していきます。

要因① ― 視覚的な錯覚

まず最初に意識してほしいのが、ロックインの瞬間におけるノーズ先端とレッジとの隙間です。この隙間は、実際以上に広く見えてしまう「視覚的な錯覚」によって、さらに強調されます。

人の体は、他の物体と同じように慣性に従って動きます。一度動き出したら、同じ方向へ、同じ速度で動き続けようとします。もちろん実際には、空気抵抗や地面との摩擦など、速度を落とす要因はいくつもありますが、ここでは話を単純にするため、アプローチ中は一定速度で進んでいると仮定します。

慣性は板にも同じように作用します。板の重心は一定の速度で前に進み、ノーズも同様に動き続けます。そのまま考えると、「このままだとノーズがレッジに当たってしまう」と感じるかもしれません。しかし実際には、ポップした瞬間、ノーズの水平方向の移動は減速し、レッジに当たることなく持ち上がります

ポップすると、ノーズはまるでレッジから逃げるかのように、弧を描いて後方へ戻る動きをします。

アプローチ中、体と板の重心は前方へ進み続けます。しかしノーズだけは逆に、レッジから遠ざかる方向へ動き、レッジとの距離を広げていきます。その結果、ロックインの瞬間には、すでに十分レッジに近づいている状態が作られます。こうすることで、前足を重心の近くに置いたままロックインでき、足を伸ばしすぎてしまうことで起こるずり落ち現象を防ぐことができます。

もちろん、ノーズが戻るスピード以上の速さで突っ込めば、レッジに当たってしまいます。ただし、通常のアプローチスピードであれば、過剰に心配する必要はありません。実際の数値については、後ほど計算して確認します。

要因② ― 体重配分

たとえレッジの近くでポップできていたとしても、体重が後ろ足に乗りすぎていると、再びレッジから離れてしまいます。この状態では、前足を引き上げる動きによって、体重がさらにレッジから遠ざけられてしまうのです。その結果、板だけが前に飛んでしまったり、ウィリーグラインドの形になってしまいます。これを防ぐためには、上体を後ろに倒さず、体重を「縦方向」に持ち上げる意識が必要です。

要因③ ― 重心の高さ

最後の要因である「重心の高さ」は、これまでの要因とは少し性質が異なります。正面から見たときには十分レッジに近づいているように見えても、問題を引き起こすことがあります。クロックドグラインドでは「ポップしすぎない方がいい」とよく言われます。高すぎる位置からレッジに板を叩きつけると、板が引っかかり、そのまま前に投げ出されてしまうからです。これは事実であり、ポップしすぎは避けるべきです。しかしその一方で、重心自体は、レッジよりも十分高い位置まで持ち上げる必要があります

ポップだけに意識が向き、重心が低いまま板を置こうとすると、前足を大きく前に突き出さなければならなくなります。この姿勢では、ウィールに体重が乗らないため、トラックが圧縮された状態を維持できず、ウィールが外れてしまいます。さらに、上体が後ろに倒れすぎてしまい、結果として板だけが前に飛んでしまうこともあります。

タイミングの計算

アプローチスピードが通常の歩行より遅い場合は、レッジからデッキ1.5枚分手前でポップしましょう。

距離は「スピード × 時間」で求められます。たとえばアプローチスピードが時速3km(0.83m/s)だとすると、これはゆっくり歩いているときとほぼ同じ速さです。この記事では、フロントウィールが浮き始めてからトラックがレッジに到達するまでに、約0.4秒かかるとしています。これらを掛け合わせると約33cmになり、デッキ約1.5枚分に相当します。

アプローチスピードが通常の歩行より速い場合は、レッジからデッキ2.5枚分手前でポップしましょう。

早歩きに近い時速5km(1.39m/s)でアプローチした場合、ポップしてからロックインするまでに進む距離は約55cmとなり、これはデッキ約2.5枚分に相当します。

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