今回は通常の板とセッティングでバックサイドビッテリーを行う方法をご紹介します。他のトリックを犠牲にして両足を前向きにつける必要はありません。独特の方法があるのです。より詳しい説明はぜひ動画を参照してください。
ポイント
重心は前足側に置き、体を小さくする
体を縮めることで、雪面と体の距離が短くなり、雪面に触れやすくなります。また、フリースタイルの板では体が十分に倒れる前にヒールカップやハイバックが雪面に触れてしまい、エッジが雪面から離れてしまうことが課題です。体を小さくすることで膝が曲がり、ハイバックが雪面に触れる問題を解消することができます。
前提
動作の名称と注意点
この動作は地域によってビッテリーターン、エクストリームカービング、ユーロカービングという場合があります。それらの違いには諸説ありますがこの記事ではすべて同じものとして解説します。
重要なポイントを先にお話ししておきます。フロントサイドではカービングの動作を活用して体を倒しますが、バックサイド(ヒールサイド)ビッテリーターンはカービングターンの延長線上にはなく、全く違う操作になります。
使用する道具
使用した道具:Jones Tweaker 2023, Burton Malavita 2016, Vans Hi-Standard 2024
信じてください。板の形状やセッティングは関係ありません。普段考えもしないような独特の方法があるのです。事実、僕が使っている板はフリースタイルの板で、ヒールカップが板から大きく出ています。アルペンボードのように両足が前向きについているわけではありません。
ステップ1 フロントサイドターンの後半で準備する
このトリックではフロントサイドターンで発生した遠心力を活用します。より深く体を倒そうとするほど、フロントサイドターンで十分加速し、バックサイドターンの弧の一番外側で発生する遠心力を強めることが重要です。
ステップ2 バックサイドターンに移行する
最も重要なポイント
ターンの最初の部分がこのトリックを成功させられるかを決める一番重要なポイントであるといっても過言ではありません。準備ができたら、重心をノーズ方向に移動させながら、体をなるべく低く縮めます。これには大きな理由が二つあります。
体を縮める理由1
一つ目の理由は、手や体と雪面の距離を縮めるためです。フロントサイドの場合は体を前にかがめれば雪に手が届きますが、バックサイドではそう簡単にはいきません。体を前足の上に縮めることで、雪面とお尻や前の手の距離が短くなり、少し手を伸ばしただけで雪面に触ることができるようになります。
体を縮める理由2
体を低くした方がいい二つ目の理由は、膝を曲げるためです。バックサイドエクストリームカービングの一番の課題は、ヒールカップやハイバックが雪面に触れ、エッジが雪面から離れてしまうことです。立っている状態から一気にエクストリームカービングの姿勢に移行しようとすると、膝が伸びた状態で倒れることになり、きっとエッジが抜けてしまうでしょう。体を小さくすることで、強制的に膝を曲げることになり、板が立ちすぎてしまう問題を解消することができます。
肩の角度
また、体を低くする際には肩の角度を板と平行にする必要があります。これにも二つの理由があります。
肩を板と平行にする理由1
理由のひとつ目は肩と板の角度が平行になっていればより自然に体を低くすることができるからです。通常のバックサイドカービングでは体はある程度開いて腰を下ろした状態になりますが、エクストリームカービングの場合、通常のカービングターンよりもさらに体を低くする必要があります。肩を板と平行にしておけば、体が開いた状態と比較して、さらに体を低くすることが可能になります。
肩を板と平行にする理由2
肩を板と平行にする理由の二つ目は、ターンの途中で板がずれないようにするためです。雪面に体を付ける時に体が開いていると、体の角度に引っ張られてノーズを中心に板が回転しすぎてしまうことがあります。雪面に体を付けた時に板が斜面の上から下を最短で結ぶライン~これをフォールラインと呼びます~と平行になるように、肩をあらかじめ閉じた状態にしておきましょう。
ステップ3 雪面に体をつける
お尻をノーズの真横のなるべく近くに下ろす
フォールラインに到達する前に、ノーズの真横にお尻の側面を付けるように下ろします。最初はなるべく小さく、ノーズのすぐ近くにお尻と手をつくようにしましょう。ノーズの隣にお尻をついても体が倒れないと思うかもしれませんが、こう考えてみてください。どれほど体を小さくしても、お尻の位置は板から離れています。この状態でお尻をノーズの脇に移動させようとすると、ヒール側のエッジを中心にお尻が後ろに倒れていき、自然と体が倒れることになります。
お尻を遠くに下ろしてしまうと何が起きるか
この特性を理解しないまま最初から遠くにお尻を付こうとすると、せっかく曲げた膝がのび、先ほど説明したヒールカップが雪面に擦れてしまう問題がまた発生してしまいます。
注意点1 タイミング
お尻をつくのはターンの前半です。お尻を付き、スライドが開始するのがターンのフォールラインと重なるようにしましょう。お尻を付くタイミングが遅くなってしまうとどうなるでしょう。斜面を滑走することによって、体には斜面の下方向に進もうとする力が働きます。体重がノーズ側にあるため、体に働く力がノーズを中心にテールが前に振り出してしまいます。
注意点2 肘の角度
手をつく際は、必ず肘を曲げた状態にしておきましょう。肘が伸びている状態で手をついてしまうと、体が倒れこむ力がすべて腕にかかってしまい、腕に大きな負担がかかってしまいます。
ステップ4 スライドする
お尻と腕を付いたら、あなたの板のセッティングが許容する範囲で体を伸ばしたり、必要に応じて上体を起こした状態でスライドしていきましょう。手が吹き飛ばした雪で顔が雪まみれになるのを楽しみましょう。ただ、あまり長い時間スライドをしてしまうと起き上がれなくなるため注意が必要です。
ステップ5 起き上がる
最後のステップとして起き上がります。起き上がるには体が斜面の下方向に進む力を活用します。膝を再び引き付けることでヒール側のエッジが重心に近づき、体に働く力がヒール側のエッジを中心に体を引き起こしてくれます。なるべく手で雪面を押さずに体を起こせるようになりましょう。
練習方法
斜滑降でトライ
斜めに滑りながらスライドするときの姿勢だけを練習する方法です。先ほどと同じように、ヒールエッジに乗りながら体をノーズ方向に下げていきます。自分が考えているよりずっと低く下げてしまって問題ありません。準備ができたらノーズのすぐわきにお尻の側面をつけるイメージで腰を下ろしていきます。
アプローチと同じ方向にスライドしていく
体を下ろすことで重心の位置がヒールサイドに移動し、斜面の上の方を狙ってしまいがちですが、これは間違いです。体を下ろしたらなるべく元の方向にスライドしていくようにしましょう。そうすることで板がたわみ、何も考えなくとも弧を描いて斜面を登るように板が回転してくれます。自分が滑った後を確認し、ヒール側のエッジがずれることなく雪面に細い線が付いていれば正しい動きができている証拠です。