スケートボードのウィールベースとは何のことで、どんな効果があるのか?

Last updated: 2024/09/28

ウィールベース。簡単に言うと前輪と後輪の間隔のことです。デッキやトラックのブランドによって異なりますが、結局何がいいのでしょうか。一般的には、ウィールベースが短い方が小さい力でポップする事ができ、長い方が安定するといわれます。科学的に、本当にそうでしょうか?

この動画では、実証実験と3D空間でのシミュレーションを通して、一般的な通説を科学的に徹底分解します。きっとこれまでになかった発見があるはずです。あなたに合ったウィールベースを見つける参考にしていただければ幸いです。

要約

ウィールベースとは?

スケートボードのウィールベースとは、前後のウィールの距離の事で、ポップの強さやトリックのやりやすさに影響を与えます。仮説として短いウィールベースではてこの原理によりポップする力が小さくなり、広いウィールベースではポップするためにより大きな力が必要になるはずです。

ウィールベースを変えて実験してみる

複数の条件をテストするために、ウィールベースを調整できるカスタムデッキを用意しました。 実験の結果、ウィールベースが広いほどポップするのにより多くの力が必要で、板がより大きく持ち上がるようになり、トリックの操作性に影響を与えることがわかりました。ウィールベースが狭いとポップしやすくなりますが、ポップしたときの板の角度が小さくなるためタイミングが難しくなり、オーリーのしやすさに影響します。

結論

ウィールベースはポップのしやすさに影響を与えるものの、板の角度の方がトリックのやりやすさにより大きな役割を果たすことがこの実験からわかりました。スケートボード物理シミュレーターを使用すると、実際のセットアップを変更せずにホイールベースの反応を仮想的にテストできます。

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仮説

まずは、ウィールベースとポップの関係を仮説化します。ウィールベースが短い方がテールの末端とトラックの距離が離れるため、てこの原理によって、より軽い力でポップすることができるはずです。これはちょうど、シーソーと同じ原理です。支点から遠い位置に座る方が、軽い力で相手を押し上げることができます。当然、逆にトラックからテールの末端までの距離が短くなれば、ポップするためにはより大きな力が必要になるはずです。

Preparation

Making an adjustble wheelbase deck

この仮説を実際に検証するため、無段階でウィールベースを調整できるデッキを作ります。やることは簡単で、単純にドリルで溝状に穴をあけるだけです。すごい煙と騒音です。日本の狭い住宅で、いつ隣の住民が警察と消防を呼ぶかはらはらしながら作業を進めました。しかし、前回の無段階テールアングルデッキの失敗を繰り返さないためにも、やれることは惜しみません。

完成版

(完成したデッキを見せながら)なんと美しいのでしょうか。まるで、科学の無限の可能性がデッキのレイヤーからあふれだしているようです。構造的完全性?まぁそれは置いておく事にしましょう。
使用したセットアップは、Almost 8.0 Inchのデッキ、Independent Forged 11のトラック、Bonesの53mmのウィールです。

実験

前提

今回の実験では、「通常時」「広いウィールベースの場合」「狭いウィールベースの場合」の条件でオーリーを行い、どのような反応になるかを検証します。

通常のウィールベースの場合

普通にオーリーすることができます。通常のデッキとそれほど大きな違いは感じませんでした。

広いウィールベースの場合

ポップするためにはより大きな力をかける必要があるように感じられました。しかし、すぐにポップに必要な力以上に大きな違いがあることに気づきました。それが、ポップしたときの板の角度です。

ウィールベースが広くなるほどテールの末端とトラックの距離が近づくため、テールが地面に到達したときの板の角度が通常のデッキと比べて大きくなります。その結果、ノーズが前足に強く食いつくことになります

前足への食いつきが強いほうが前足で板をコントロールしやすくなると思うかもしれませんが、必ずしもいい事ばかりではありません。前回の動画で、オーリーの後半では前足を押し下げることでテールが持ち上がると解説しました。板が前足を強く押し付けている間に前足を押し下げることは簡単にはできず、結果としてテールを引き上げることが難しくなります。

このことから次のことが分かりました。広いウィールベースでもオーリーをすることはできるものの、テールをポップするためにより大きな力が必要になること。そして板の角度が大きくなるため、タイミングを変えるなどトリックのやり方を調整しないとやりづらくなるという事です

狭いウィールベースの場合

今度は狭いウィールベースの場合を考えてみましょう。ポップに必要な力は極端に小さくなりましたが、少し踏んだだけでもテールが下がってしまうため、ポップのタイミングが非常に難しくなりました。

ただ、先ほどと同じく、ポップに必要な力よりも大きな問題は板の角度でした。いつものようにポップしてもノーズが十分持ち上がらず、普段のオーリーすらできなくなってしまいました。

これは、ウィールベースが狭くなるとテールの末端とトラックの距離が遠くなり、テールが地面に到達したときの板の角度が通常より小さくなるからです。結果として、普段前足を引き上げている高さまでノーズが持ち上がってくることができず、前足がすっぽ抜けるようになってしまいました

このため、オーリーするためには前足を低く保つ必要があり、低いオーリーしかできなくなってしまいました。もちろん、しばらく練習するとそれなりにはトリックもできるようになり、キックフリップや、ノーズスライド、テールスライドもやることができました。すごく気持ち悪い感覚ではありましたが。

Conclusion

以上から、ウィールベースを調整することでポップのしやすさが変化することがわかりました。ただし、それ以上に板の角度及ぼす影響の方が、実際のトリックのやりやすさには大きな影響があることがわかりました。

もちろんこの実験は極端な例ではあります。実際には、テールの角度や長さ、トラックの高さなども板の角度に大きな影響を及ぼすことが予想されます。また、狭いウィールベースの場合でも、今回の実験ほど大きく狭めなければ、十分にノーズを持ち上げることができる状態を維持しながら軽い力でポップすることができるようになるかもしれません。

ウィールベースシミュレーター

どのウィールベースを選ぶのがいいのか

では、結局どのウィールベースを選ぶのがいいのでしょうか?新しいデッキやトラックを買わなくても複数の条件を検証できるように、以前紹介した物理シミュレーターにウィールベースを自由に調整できる機能を追加しました。

物理市ミューレータを試してみる

使い方その1

画面横のスライダーを動かすと、3Dモデルのウィールベースが変化します。この状態でRerunボタンを押すことで、その状態のスケートボードのテールをポップしたときの状況を再現することができます。

使い方その2

このシステムでは球体の重さを自由に変更することも可能です。同じ重さの球体で、ウィールベースが長い場合はテールが地面に到達しませんが、短い場合は楽に到達することが分かります。

使い方その3

また、球体の重量の重量を軽くすると通常のウィールベースではテールは地面に到達しませんが、ウィールベースを短くするとテールが地面に到達することが分かります。

このシステムは無料で使うことができますので、気になったウィールベースの反応をぜひ試してみてください。

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