Summary
体と板を回す力学は2種類
上半身の先行動作に追従することで足を回転させることができます。空中では、上体を逆方向に回転させることで、下半身の回転を加速させることができます。これは、体がエネルギーの総和を保とうとするためです。
腕を広げることで状態の慣性モーメントを高めることが可能
物体は半径が大きくなるとより大きな慣性モーメントを持つことになり、回転しづらくなります。空中で足を回しこもうとすると上半身と下半身は同じ力を受けますが、上半身の慣性モーメントの方が大きいため回転力に影響されづらくなり、下半身を回しこみやすくなります。
Simulation
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BS 180の種類
トリックの種類は3つ以上
BS180の種類を整理しましょう。大きく分けると以下の3種類になります。
- しっかり板をはじいて、板を空中で水平にするタイプ
- 後ろ足で板をしゃくって回転させるタイプ
- ノーズから先についてピボットするタイプ
今回は、その中でも一番簡単で、BS回転に慣れるのに最適な「後ろ足で板をしゃくって回転させるタイプ」について科学的に分析します。
前提知識1
各運動量の保存
質問です。あなたはまっすぐ上にジャンプして、空中で回転を始めることはできますか?おそらくできないはずです。
これは、人間の体を含むすべての物体には、角運動量保存の法則が働くからです。私のように物理が苦手な方のために簡単にいうと、物体が空中で持っているエネルギー量は一定であり、物体はそのエネルギーを勝手に増大させて自分自身を回転させる力を生み出すことはできないという特性を持っています。
空中で新たなエネルギーを得られないのであればどうすべきか?
空中で新たなエネルギーを得ることができないということは、回転するためには地面から反発を受けることで初速をつけるしかないということになります。腕を大きく振ることで初速をなるべく大きくしようとする人がいるのも納得できます。
エネルギー量を一定にしさえすれば空中でも回転できる
ところが、足元だけ動かそうとしたらどうでしょうか?今度は簡単に180度回せるはずです。その代わり、上体が逆方向に180度回転したはずです。
つまり物体は、片方に回転する力と、その力を打ち消す逆方向の力を生むことで総エネルギー量を一定に保てば、空中でも回転することができるということになります。
前提知識2
Moment of Inertia
ここで注目すべきは、両手をたたんでいる状態で足を動かすと、脚と同じだけ腕は逆方向に回転するのに対し、広げていると腕はほとんど動かないということです。これは、両手と脚がもつ、「慣性モーメント」という特性の大きさが異なるためです。
これも簡単に言うと、半径の大きな物体の方が、回転しづらいという特性を持っているためです。具体的にどういうことか、実際のBS180の動きに合わせて考えてみましょう。
慣性モーメントが大きければ回転しにくい
回転している椅子に座っているときに足を延ばした時にどうなるか考えてみてください。回転がゆっくりになるはずです。
BS180でも同じことが起きます。上半身を広げると、慣性モーメントが増大します。これは、空中で足を回転させようとすると、上半身はその力と同じ大きさで逆方向の力を受けますが、大きな慣性モーメントを持っているためその影響を受けにくくなります。上半身を下半身ほど回す必要がなくなるため、安定したBS180が可能になります。
実行
足の置き方
後ろ足はテールのつま先側につま先を少し出すくらいのポジションで置きます。前足は前のボルトのすぐ後ろに置きます。
肩を逆方向に絞る
まっすぐ進みながら前の手を少し背中側に回します。ノーズを12時だとすると9~11時方向においておきましょう。
高くポップするときの方の角度の違い
この記事では、テールをしゃくるケースに集中して解説します。より高くポップするときはそれほど肩を回しこむ必要はありません。
画像内で私の前の手が膝の前にあることが分かると思います。より高くBS180しようと思うと、だんだんオーリーの動作に近づいていくからです。 この点はまた次の機会に解説しましょう。
体重の配分
体重を持ち上げる前に、体重をつま先側に移動させ始めます。
しゃくるタイプのBS180では、後ろ足で板の重心を前に押し出すことが重要になります。つま先側に体重を移動させることでこの動作が楽になります。後ほどまた詳しくお話しします。
前の手を前方に投げ出す
次に、体重を持ち上げながら、前の手を2~3時方向前方に振り上げましょう。この時、手を振る力を活用して体重を前足の位置に合わせるように移動させることを意識しましょう。
なぜ足が板から離れてしまうのか
この時、遠くに体重移動しすぎてしまったり、あまりつま先側に角度をつけすぎて飛んでしまうと足が板から離れてしまう原因になります。前の手を振りだす力を使って体重を前足の上に移動させるようにしましょう。
腕を伸ばす=慣性モーメントを増大させる
体を伸ばしたら両手を広げます。これは、両手を広げることで上体の慣性モーメント、つまり「物体の回転のしにくさ」を下半身と比較して大きくし、下半身を回し込んでも上体がブレにくくなる特性を利用するためです。
つまり、腕を広げると上半身を安定させながら足を回しこみやすくなりますし、いうまでもありませんが腕が体重を持ち上げることになるためより長く空中にとどまることができるようになります。
テールをポップする
テールをポップするのは両腕を広げた後です。重心に対してテールがかかと側にあるため、脚を振って板を回転させようとしなくとも、真下にポップしようとするだけでテールに対して自然に横向きの力がかかります。
前足に働く摩擦を使って回転の軸を作る
この時点で正しく体重が前足直上にあれば、ノーズが持ち上がろうとする力と、体重と前足がノーズを押さえつける力がぶつかり、前足に強い摩擦が生まれます。重心と板の支点が垂直な位置に並ぶ位置にあれば、後ろ足には体重がかかっていない状態になるため、軽い力で回すことが可能になります。
テールをしゃくる動作をどう練習するか
板を回すのが難しい人は、前に進んでいる状態で後ろ足をしゃくってみましょう。ポップしないベイビーBS180だと思ってください。回転に慣れていないうちはポップする必要すらありません。
しゃくりの動作は継続的な一連の動き
体重をつま先側に乗せ、肩を閉じていきながら後ろ足をバックサイド方向に回していきます。体重がつま先側にあることで地面をとらえやすくなります。
しゃくっている間は、板の重心を継続的に前に押し出し続けるようにしましょう。重要なのは、BS180でしゃくる動作は瞬間的には終わらず、継続的なものであるということです.