まとめ
ウィール径が大きくなると重量も増すが、その影響はごく小さい
直径3 mmの違いによる、4個セット全体の重量差は約48 gです。これはおおよそ卵1個分の重さに相当し、質量だけで見ればフリップトリックへの影響はほぼ無視できます。 むしろ影響が大きいのは、総重量の増加ではなく、回転軸からどの位置に質量が分布しているかという点です。
大径ウィールは転がり抵抗を低減する
転がり抵抗は荷重に比例し、ウィール径に反比例します。 そのため、大きなウィールほど接地面での変形が相対的に小さくなり、効率よく転がるのです。
シミュレーション
重量とトリックへの影響
基礎データ
Bonesの公式仕様によれば、53 mmウィール4個セットの重量は200 g強とされています。 本稿ではシミュレーションの都合上、これを200 g(1 個あたり 50 g)と仮定します。
実測値の確認
仮定の妥当性を確かめるため、実際に計測を行いました。ここで示しているのは Bones の 53 mm V2 シェイプモデルで、重量は 56 g でした。
想定した 50 g に十分近い値であるため、以降の議論では 50 g を基準として扱います。
3 mm の差が生む変化
スケートボードウィールは一般的に 3 mm 刻みで展開されています。
たとえば、多くのブランドでは 50 mm・53 mm・56 mm といったサイズがラインナップされています。複数の情報源によると、直径 1 mm の増加につき、おおよそ 4 g の質量が増えると言われています。
したがって、3 mm の増加は 1 個あたり約 12 g、セット全体で約 48 g の増加に相当します。
3 mm の違い ≈ 卵1個分の重さ
日常的な物の中で、約 48 g に近いものは何でしょうか。卵がほぼ同等の重さです。
つまり、50 mm から 53 mm にサイズを上げると、セッティング全体に卵 1 個分程度の質量が加わる計算になります。
*実際の重量はウィールの形状や素材によって異なります。
「卵1個分の重量」はフリップに影響するのか
これを検証するため、通常の 3 kg のデッキと、卵 1 個分・2 個分重くしたデッキを比較します。外部から同一条件で力を加え、それぞれがどのように反応するかを観察します。
*なお、シミュレーション内部で質量分布を調整しており、画面上に描かれた卵自体には質量がありません。
実験条件
この実験では、各デッキの回転軸を固定し、片側にボールを落下させています。
接触位置はすべて機械的に同一となるよう計算されており、フリップに必要なエネルギーの違いを直接比較できます。
実験結果
ボールを落下させると、3 種類のデッキはいずれもほぼ同じ動きを示しました。
デッキ全体の重量を 30 kg 程度まで増やすと、ようやくフリップ動作に明確な遅れが生じます。
このことから次の結論が導かれます。確かに重量はフリップ動作に影響しますが、卵1〜2個分の増加では、実際上ほとんど変化は生じません。
詳細は関連動画をご参照ください。
スピードと乗り心地への影響
一般的に言われていること
ウィール径がフリップトリックに与える影響はごく小さいとして、では〈走行性能〉についてはどうでしょうか。一般には次のように語られます。
- 大きいウィールは最高速度が高い。
- 小さいウィールは加速が速い。
これらは正しいのでしょうか。物理エンジンを用いて検証します。
実験のセットアップ
端的に言えば、重いウィールは転がりにくく、大径ウィールは比較的転がりやすくなります。
実験結果
滑らかな路面上を惰性で走らせると、最も大きいウィールを装着したセットが最も長い距離を進みました。
この影響を及ぼしているのは転がり抵抗です。ウィールが大きくなるほど地面から受ける変形抵抗が減り、速度を維持したままより長く進むことができます。
荒れた路面で差が拡大する理由
この傾向は、凹凸の多い路面ほど顕著になります。大径ウィールは段差やクラックから受ける影響が小さく、より長距離を安定して走行できるためです。
