まとめ
テールを弾いても体は浮かない。
重心は別で持ち上げる必要がある。
スケートボードのテールを弾くだけでは、板が傾くだけで重心を上方向に動かすことはできません。高くジャンプするには、両足を連動させて体重を持ち上げる動きが必要です。これは物理の基本で、地面を押せば地面が押し返してくれるという法則に従っています。ポップの力だけではジャンプは成立しません。
地面に力を伝えるのはテールではなくウィール。
オーリーの際、体重はテールではなくウィール(車輪)を通して地面に伝わります。テールだけを踏んでも、板がシーソーのように傾くだけで上方向の反力は生まれません。正しいやり方は、両足で板をしっかり押し下げることで、板全体が地面に圧縮され、その反力で体が浮き上がるというものです。
「運動連鎖」と「タイミング」が、跳ね上げ力を最大化する。
ジャンプの力を最大限に引き出すには、足・太もも・背中など全身を一連の流れで連動させて伸ばすことが重要です。これは「運動連鎖」と呼ばれる原理で、ジャンプの力を増幅します。完全に伸びきる前にポップしてしまうと、オーリーの高さは出ません。ポップのタイミングを全身の伸展と一致させることが、高さと効率のカギです。
なぜ私たちはジャンプできるのでしょうか?それは、足で地面を蹴ったときに地面がその力を押し返してくれるからです。その反作用によって体の重心が持ち上がるのです。たとえば、無重力の宇宙空間では、いくら足を動かしてもジャンプすることはできません。なぜなら、押し返してくれるものが存在しないからです。
地面に対して強く力を加えれば加えるほど、その反作用として地面からも強い力が返ってきます。この原理によって、より大きな力を下に加えれば高くジャンプすることが可能になります。しかしそれは、そのまま「強くポップすれば高くオーリーできる」という話にはなりません。いくつかの要因により、そのようにはならないのです。

1. 地面に直接立っているときは、足からの力が即座に地面へと伝わります。しかしスケートボードの上では、どのように力をかけるかによって、その下向きの力が地面に正しく届かないことがあります。

2. スケートボードにおいて、地面に力を伝えているのはテールではなくウィール(車輪)です。つまり、体重による押し下げの力はテールではなくウィールを通じて地面に作用します。

最初のポイントをシーソーを使った例で考えてみましょう。一方の足でシーソーを踏むと、板はその方向に回転し、反対側が持ち上がりますが、重心の位置は変わりません。
地面の上に片足で立っている場合、足で地面を押し下げるだけで体重を持ち上げることができます。これは、重心・足・地面が垂直に一直線に並んでいるからです。まさに「作用・反作用」の関係です。押せば、その分押し返されるというわけです。

しかしシーソーの上では、体の重心と足が垂直に揃っていないため、どんなに強く踏み込んでも板が回転するだけです。ジャンプするには、支点に向かって下向きの力を加え、地面からの反発を受ける必要があります。そのためには、後ろ足だけでなく、両足で均等に板を踏みつけることが必要です。そうして初めて地面からの反発力が両足に伝わり、体重を持ち上げることができるのです。

オーリーでも本当にこういうことが起きているのでしょうか?このトリック中に、どのように荷重が移動するのかを見ていきましょう。立った状態からしゃがみ込むとき、体が生み出す下向きの加速によって発生する力は、前輪と後輪にほぼ均等に分散されます。

そこから体を持ち上げるとき、両足でボードを踏み込む力が後輪に伝わっていきます。このとき、もし一方の足だけで踏み込んでしまうと、ちょうどシーソーのように、重心を持ち上げるためのエネルギーが回転の力に変換されてしまいます。
地面からの反発を受けずにポップしようとするのは、シーソーを回すだけの動作と同じです。一方で、両足でしっかりボードを踏み込み、地面からの反発を得ようとする動作は、シーソーの上でジャンプするようなものです。だからこそ、両足でボードを踏み込む必要があるのです。どちらがより高くオーリーできるかは明らかであり、オーリーの高さはポップの強さとは比例しません。

ここで覚えておきたいのは、後ろ足に体重をかけすぎるとマニュアルのような状態になってしまうという点です。さらに、体を伸ばすときに重心を後ろ足側にずらしてしまうと、板だけが前に飛んでいってしまいます。理想は、両足の間で重心を上下にまっすぐ動かせることです。

2つ目のポイントを思い出してください。重さを地面に伝えているのはテールではなくウィールです。両足で板を押し下げる力は、ウィールを通じて地面に伝わり、その反発によって両足が押し返され、重心が持ち上がります。

テールの主な役割は、板の角度を変えるための支点になることです。どんなに強くポップしても、板が大きく跳ね上がることはなく、その跳ね上がりによって体重が持ち上がるわけではありません。たとえば、板が体に当たったとしても、自分の体が動くことはないですよね?板の質量が軽すぎて、体を動かす力にはならないからです。もう一度言います。テールが重さを地面に伝えているわけではなく、それはウィールの役目です。

自分の体重を持ち上げる感覚を身につけるために、オーリースタンスでヒッピージャンプを練習してみましょう。ただのヒッピージャンプとは違います。通常のヒッピージャンプでは、足をビスの上に置くことが多く、その場合は両足で加えた力がそのまま地面に伝わります。しかし、それは実際のオーリーでは起こりません。かわりに、後ろのウィールを通じて地面を押す感覚に慣れる必要があります。
大事なのは、自分の体重が板にかけている圧力を抜いていくことです。うまくいっていれば、フロントウィールが少し浮いたり、瞬間的にマニュアルができるはずです。

最後に、「ポップ」の動作そのものについて考えてみましょう。よく「足首を弾くように使う」と言われますが、それだけでは十分ではありません。ふくらはぎの筋肉だけでは、体全体の重さを持ち上げるには小さすぎるのです。 身体の重さがデッキに乗っている状態では、いくら強くポップしてもデッキはほとんど浮きません。先ほど述べたように、体重を持ち上げる感覚を練習し、体・太もも・脚をまっすぐに伸ばす動きを意識しましょう。「運動連鎖(キネティックチェーン)」と呼ばれるこの動きは、複数の筋肉が同じ方向に力を出し合うことで、身体が最大の力を発揮できる仕組みです。

タイミングは非常に重要です。自分のオーリーを撮影してみてください。もしポップの瞬間に膝や身体がまだ曲がっているようであれば、それはポップのタイミングが早すぎるということです。
