Summary
板を回転させる方法は二つ
板を回転させるためには、体重を板の上から外した状態でテールをはじくか、足首や股関節の回転を使って板をしゃくる方法があります。この二つを組み合わせることができれば小さい力で板を回転させることができます。
動きながらの方がトリックは楽になる
板を回転させるためには板の上から体重を外した方がいいことがありますが、静止した状態で板から体重を外したままにするとその方向に倒れてしまいます。動きながら練習することで、体重をかけている方向にターンしつつ、体重をかけ続けることができるため、必ず動きながら練習するようにしましょう。
板を回転させる力の分類
板を回転させる力は2種類
Shove-itをもとに考えてみましょう。Shove-itはしゃくる動作でも引く動作でもできます。質問です。これらのShove-itはどのように違っているかわかりますか?最初のShove-itではしゃくって回しています。この角度からはわかりにくいかもしれませんが、足首を内側に回しこんでいます。一方で次の方法では、しゃくることなく足をうしろに振りぬいて水平方向の力をかけています。
テールを引く動作について
水平方向に力をかける方法
バックサイドShove-itでは話は単純で、後ろ足を単純に後ろ側に振りぬけばいいだけです。ただし、Shove-itはフロントサイド方向になると急に難しくなります。膝が前に曲がらないからです。
体重移動で板を回す方法
ただし、膝を曲げる以外にも板に水平方向の力をかける方法はあります。以前の動画で解説しましたが、体重をかかと側に置いて真下にポップしようとすると、体の重心に対して作用点(ポップするテールの位置)がつま先側にあるため、意識としては真下にはじこうとしていても結果的につま先側にテールを送り出す力が働きます。
体重移動で板を回すことのデメリット
この概念を活用することで楽に板をフロントサイド方向に回すことができます。一方で困ったことに、体重を板の上からずらしすぎてしまうと、高さが出なくなってしまいます。後ろ足は板に回転を与えるだけではなく、体を持ち上げるという重要な役割を果たします。体重が板の真上にあるときは、垂直に下向きの力をかけることで地面からの反発力を100%効率的に受け取ることができます。
しゃくることの意義
一方、板の上から重心が外れている状態で足をけり下げると、地面が体を押し返す力も弱まってしまいます。まさにここがしゃくりの動作が本領を発揮する場面です。しゃくりの動作によって重心を板の上にとどめて置きながら板に回転を与えることができます。
しゃくりの動作とは
しゃくりの動作の定義
いったん落ち着いて考えてみましょう。「しゃくり」という表現は色々なトリックで使われますが、客観的に何のことを指しているのでしょうか?違う意見を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、Whythetrickでは「垂直軸もしくはZ軸を中心につま先を内側に回転させること」と捉えています。
しゃくりで板が回転する方向
実際に、同じしゃくりの動作を使って板を完全に違う方向に回転させることもできます。例えば、しゃくりの動作を使えば板がバックサイド方向に回転するTreflipができることは有名です。でもそれだけではありません。しゃくりの動作によってフロントサイド360 Pop Shove-itもできるのです。しゃくりの動作で板をフロントサイドとバックサイド両方に回転させることができるのはなぜなのか考えてみましょう。
Treflipでのしゃくりの動作の例
Treflipの場合、後ろ足をテールのつま先側に置いて、つま先を内側にひねりこむような動作をすると、つま先側のウィールに圧力がかかり、板をバックサイド方向に回転させることになります。
Treflipの詳しい解説は以前の動画を参考にしてください。要約だけお伝えすると、このトリックのもっとも重要で一番忘れやすい点は後ろ足のつま先を内側にひねりこむことです。私の場合、体重をつま先側にかけるため、テールには2種類の力が働くことになります。体重移動による水平方向の力と、つま先をしゃくることによる回転力です。この二つを組み合わせることで小さい力で板を回転させることができます。
フロントサイド回転でのしゃくりの動作
今度はフロントサイド方向の回転を見てみましょう。トレフリップとは逆にかかと側に置いて同じようにつま先を内側に回転させると、板はフロントサイド方向に開くような回転をすることになります。僕の動作自体はほぼ同じなのに、板は全く異なる反応を見せるようになります。
フロントサイドポップショービットでのしゃくりの動作の例
フロントサイドポップショービットを例にとってみてみましょう。後ろ足をかかと側に置き、つま先を内側に回しこむと、体が伸びあがる際に発生する下向きの力がつま先側への回転と合わさることで、テールに対してらせん状に下向きの力をかけることになります。この力によって、テールを地面に強くヒットさせつつ、板を効果的に回転させることができるようになるはずです。
練習する際の注意点
必ず動きながら練習する
板を効果的に回転させる要素があらかた分かったところで、ここからは「どのように体の下に板をキープするか」という点について科学的に考えてみましょう。どの様なトリックでも、いくら遅くても構わないので、必ず動きながら練習するようにしましょう。これは、私の単なる主観による意見ではなく、動きながらトリックをした方がいいことには科学的な理由があります。
フロントポップでは板が後ろ側に移動する
またフロントサイドポップショービットを例にして考えてみます。このトリックでは、板がその中心を軸として回転するわけではなく、後ろのトラックのアクスルを中心に板が回転します。板自身の重量や前のトラックの重量がアクスルを中心に振り回されることにより、板はヒール側&テール方向に移動します。
移動しながらだと体重移動が楽になる理由
このため、体の下に板をキープするためには、体を板が着地する方向に移動させなければなりません。先ほども言及した通り、かかと側に体重を置いておくことで達成できると同時に、弧の体重移動こそがこのトリックを難しくする要素でもあります。なぜなら、静止した状態でかかと側に体重を乗せ続けていると転んでしまうからです。もちろん、バックサイド方向でも全く同じことが言えます。一方で、動いている間は転ぶことなく体重をかけている方向にターンしていくことができます。
体重移動しすぎに注意
フロントサイドPop Shove-itの場合は、かかと側に軽くターンしながらやると楽に回すことができます。逆に、バックサイド系のトリックの際はつま先側にターンすると楽に回せるかもしれません。ただし、間違えないようにしてください。板の上から体重を外しすぎるとトリックの高さが低くなってしまいます。加えて、体重移動で板を楽に回転させることができるようになるとしても、しゃくりの動作をマスターしてしまえば体重移動をそれほど意識する必要はなくなります。
体重移動しなくても板を回転させることはできる
その証拠に、まっすぐ進んでいる状態でもフロントサイドに板を回転させることもできるのです。従って、トリックの高さを保ったまま板を回転させたいときにはしゃくりの動作を織り交ぜてみましょう。
しゃくりには体重移動が重要
ただし、あまり早いタイミングでしゃくってしまうと板を回転させることはできないため、体が伸びて、つま先のみが板に接している状態になるまで待ってからしゃくるようにしましょう。
しゃくりの動作と生体力学について
しゃくりで使用する人体の部位
人間の体の仕組みの観点では、しゃくりの動作ができる人体の部位は2か所あります。足首と股関節です。例えば、膝を固定した状態で足首だけ回してみてください。つま先を外側に開いたり戻したりすることができるはずです。膝関節は人体の構造上垂直軸を中心に回るようにはできていませんので、つま先の回転が足りない場合は、股関節を使って内向きの回転を加えるようにしてみましょう。この感覚を頭に置いておき、トレフリップでもショービットでも、しゃくりが足りないと思ったときにはやってみると何か変わるかもしれません。